【連載】本音で語る愛車買取 ｜買取業者の「心理と真理」

外資系消費財メーカー勤務を経て自動車メディア業界に転身。「IMPORTカーセンサー」編集デスクなどを歴任後、独自の着眼点から自動車にまつわるあれこれを論じる異色自動車コラムニストとして、大手メディア多数で活動中の伊達軍曹氏。そんな軍曹氏に“本音”で「愛車買取」について語ってもらう連載企画。第3章は、買取業者の「本音」について考えていきます。

前回までのお話は、こちらから。
【連載】愛車買取の真実 ｜プロローグ
【連載】愛車買取の真実 ｜一括査定サービスの本質とは

買取業者の「心理と真理」

車買取に関する駄文アフィリエイトサイトの情報に翻弄されることなく、真の高値買取を実現させるために、われわれは何をどうすれば良いのでしょうか？

それにはまず、買取業者の「心理と真理」を理解することが大切です。

街道沿いなどでよく見かける買取専門店の看板には「高価買取」と大書されている場合が多いはずです。お店によっては「どこよりも高く買います！」とか書いているかもしれません。つまり、彼ら／彼女らはこう言っているわけです。「ウチはできるだけ高くあなたの車を買い取りたいと願っておりますよ」と。

これが車買取の世界にはびこっている勘違いの出発点です。

ご自分で商売をやっている人には説明するまでもないでしょうが、「商材をなるべく高く仕入れたい」と願っている商人などこの世にいません。彼ら／彼女らの願いはその真逆で、「なるべくなら安く仕入れたい」です。これは別に非難すべき話ではなく、商人としては当然のことでしょう。

しかし車を売ろうとするユーザーは「高価買取！」「どこよりも高く！」と言われると、なぜかは知りませんが「あぁ、そうなんだ」と簡単に信じてしまいます。

……そんなことあるわけないじゃないですか。

前回軽くご説明しましたが、買取業者の利益というのは、ユーザーから車を買い取り、それをオートオークションで売る（中古車販売店に落札させる）際の差額です。で、オートオークションにおける相場というのは、車種や年式、走行距離、色、装備、修復歴の有無などに応じてあらかじめだいたい決まっています（もちろん絶対ではなく、いろいろ変動もしますが）。

その際、例えばオートオークションでの相場が約80万円の車種があったとしたら、「よし、じゃあお客様には75万円ぐらいの超絶限界値をご提示して、なるべくご満足いただくことにしよう！」などと考える買取業者はいません。もしもいたらソッコーで倒産します。

彼ら／彼女らのミッションは「ユーザーから可能な限り安く買い取ることで、自社の利益を最大化させること」なんです。

もちろん、平均的な買取相場が50万円ぐらいの車に対して「う～ん、出せて5万円ですね」などと値切りすぎては誰も車（商材）を売ってくれずに会社が破綻しますので、そのあたりは様子を見ながらですが、とにかく、業者の願いは「できる範囲内でなるべく安く買い取ること」に尽きます。

そこが理解できると、ちまたの一括査定サイトがしばしば売りにしている「最大○○社の買取業者があなたの車を競ることになるので、自然と高値になるんです！」という話のアラが見えてきます。

最大○○社があなたの車を競るのは事実ですが、それは別に「高値」を競いたいからではありません。もちろん結果として高値を競ることになる場合もありますが、基本的には「いくらぐらいの安値なら、この人（ユーザー）は納得してくれて、そして他社よりちょっとだけ高値になるだろうか？」という、いわば「安値方向のチキンレース」に参加するだけのことなのです。

で、以上のとおりの「買取業者の心理と真理」をしっかりと理解したうえで、次に進みましょう。そんな状況下でも自分の利益＝売却額をなるべく最大化させるための、具体的ないくつかの方法です。

押忍。